競技の中で、一歩目のスピードはパフォーマンスを大きく左右します。
サッカー、バスケ、野球――どんな競技でも「最初の一歩」が遅れるだけで、プレーの主導権を奪われてしまう場面は少なくありません。
「もっと速く動き出したい」
「スタートダッシュで置いていかれる感じがある」
そんな悩みを持つ選手に対して、トレーナーとしてこれまで多くのアプローチをしてきました。
今回は、身体操作という視点から見た“一歩目を速くするコツ”についてお伝えします。
筋力だけでは加速しない理由
「一歩目を速くするには筋トレだ!」と思っている方も多いかもしれません。
もちろん筋力は土台として必要です。
ですが、現場で多くのアスリートと関わっていると、筋力があるのに動き出しが遅い選手も少なくありません。
そこで重要になるのが「身体操作」=力を“使いこなす技術”です。
一歩目を速くするための3つの視点
① 地面の捉え方
加速には地面を正しく“押す”感覚が必要です。
多くの選手は、接地の瞬間に地面を“ただ踏んでいる”だけになってしまい、力が伝わりません。
- 足裏のどこで地面を捉えるか
- 足から体幹(肩甲骨)まで上手く力を伝達できているか
⇨ 足裏全体で地面を“押し返す”意識を持つと、力が逃げにくくなります。
② 軸足の安定性
スタート時に地面を押す“軸足”の安定性がないと、力がブレて横や上に逃げます。
- 骨盤・体幹と連動して「足から上へ力が繋がる」感覚があるか
- 足関節〜股関節の“軸の感覚”を認識できているか
⇨ ここが安定していないと、出力しても無駄な動きが増えてしまいます。
③ 力の伝え方(連動)
地面を押して発生した力が、いかにロスなく全身へ伝わるかが加速に直結します。
- 肩〜体幹〜下肢の“連動性”はあるか?
- 特に「反対側の手足」の連動が滑らかかどうか
⇨ 力は“繋がっている”ことで最大化されます。部分トレではなく、「動き全体」で見ることがカギ。
よくあるNGパターン
- 地面を蹴る意識が強く、接地が硬い(=力が逃げやすい)
- 上体が浮きすぎて、力が下に伝わらない
- 体幹が固まりすぎて“連動”が起きていない
「筋力が足りない」のではなく、「力の使い方が悪い」ケースが非常に多いです。
身体操作トレーニングの一例
たとえばセッションではこんなアプローチをします:
- 感覚入力トレーニング:足裏や体幹の“動きやすい状態”を作る
- 脱力→出力のトレーニング:不要な力みを取り、動き出しをスムーズにする
- 軸足感覚の再構築:足裏への刺激入力+連動動作で安定性を高める
これらを段階的に行うことで、「一歩目がスッと出る」「走りが軽くなる」という変化が多く見られます。
まとめ:一歩目は“技術”で変わる
一歩目を速くするには、「力の出し方」よりも「力の使い方」を変える視点が必要です。
筋トレだけでどうにもならなかった選手が、身体操作を見直しただけでプレーが変わる――そんな瞬間をたくさん見てきました。
今後のブログでも、こうした具体的なトレーニングや考え方をどんどん発信していきます。